市役所ライブの感動が冷めやらぬ中、つかさくんがぽつりとつぶやきました。
「もっといろんな人に聴いてほしい。駅前でストリートライブ、やってみたいな」
正直、私は乗り気じゃありませんでした。
仕事終わりで疲れてるし、寒いし、めんどくさいし、恥ずかしい。
でも、いつも繊細で臆病なつかさくんが、なぜかやる気満々。
つかさくんにはとても珍しいことなので、重い腰を上げることにしました。
CDを売るわけでも、投げ銭を求めるわけでもない。
ただ、音楽を届けたい——それだけの想いで始めたストリートライブ。
いざ演奏を始めてみると、思いがけない反応が次々と返ってきました。
- 外国人の方が立ち止まり、笑顔で拍手
- 会社帰りの人が「癒された」と声をかけてくれる
- 若い女の子が「おねえさん歌上手い!教えて!」とお菓子をくれたり
- 「これはお金を取っていいレベルだよ」と言ってチップをくれる人も

中でも印象的だったのは、中国人の男の子。
その後のカフェライブにも友達を連れて来てくれて、
近くの蕎麦屋で働いていると教えてくれました。
私たちもその蕎麦屋に食べに行き、音楽をきっかけに心の交流が生まれました。
つかさくんにとって、この時間はとても大切なものになりました。
誰かの心に届いたとき、音楽はただの音ではなく、“つながり”になる。
「ただ演奏するだけ」——それが、こんなにも豊かな時間を生むなんて
想像もしていませんでした。


