ギタープリンスの夫は、うつでギターも会社もやめました

ギタープリンスと呼ばれ、みんなから愛さた夫はうつ病、不安障害になり会社もギターもやめました。

第14話:臆病なつかさくんの挑戦~駅前ストリートライブ~

市役所ライブの感動が冷めやらぬ中、つかさくんがぽつりとつぶやきました。
「もっといろんな人に聴いてほしい。駅前でストリートライブ、やってみたいな」

正直、私は乗り気じゃありませんでした。
仕事終わりで疲れてるし、寒いし、めんどくさいし、恥ずかしい。
でも、いつも繊細で臆病なつかさくんが、なぜかやる気満々。
つかさくんにはとても珍しいことなので、重い腰を上げることにしました。

CDを売るわけでも、投げ銭を求めるわけでもない。
ただ、音楽を届けたい——それだけの想いで始めたストリートライブ。

いざ演奏を始めてみると、思いがけない反応が次々と返ってきました。

  • 外国人の方が立ち止まり、笑顔で拍手
  • 会社帰りの人が「癒された」と声をかけてくれる
  • 若い女の子が「おねえさん歌上手い!教えて!」とお菓子をくれたり
  • 「これはお金を取っていいレベルだよ」と言ってチップをくれる人も

中でも印象的だったのは、中国人の男の子。
その後のカフェライブにも友達を連れて来てくれて、
近くの蕎麦屋で働いていると教えてくれました。
私たちもその蕎麦屋に食べに行き、音楽をきっかけに心の交流が生まれました。

つかさくんにとって、この時間はとても大切なものになりました。
誰かの心に届いたとき、音楽はただの音ではなく、“つながり”になる。

「ただ演奏するだけ」——それが、こんなにも豊かな時間を生むなんて
想像もしていませんでした。

第13話:つかさくん、真っ青からの大逆転!涙と拍手に包まれた市役所ライブ

「音楽って、こんなにも人の心に届くんだ——」
私たち夫婦ユニットがこれまでに経験した数々のステージの中で、
今でも胸に深く刻まれているのが、
つかさくんの実家がある市役所で行ったライブです。
市役所内の大きな広間でのステージは音響設備ゼロ。
まさに手作りの挑戦でした。
彼の後輩にカホン(打楽器)をお願いし、
役所の担当者と何度も打ち合わせを重ねながら、
ケーブル、マイク、モニター(音の返し)などをすべて自分たちで準備。
まるで文化祭のような熱量で、ステージを一から作り上げました。
ところが当日、機材のひとつを忘れてしまい、つかさくんは顔面蒼白。
パニック寸前の中、なんとかリカバリーしてステージへ。

すると、目の前には——なんと100名を超えるお客様が!
年配の方が多いと聞いていたので、昭和歌謡を中心に選曲。
石原裕次郎さんの名曲では、会場全体がひとつになって大合唱。
約40分間のステージは濃密なひとときでした。

終演後、お客様をお見送りしていると、涙を流しながら握手を求めてくださる方も。

「感動しました」
その一言が、つかさくんの繊細な心にじんわりと染み渡り、
私たちの胸を熱くしました。

彼のご両親や地元の知人も駆けつけてくれて、
「本当に素晴らしかった」と言ってもらえたことも、忘れられない思い出です。

この日、私たちは確信しました。
人の心に響く演奏こそが、音楽の原点だと。

今では、彼のギターの素晴らしい音色を聴くことは叶いません。
病気が全てを奪ってしまった。
そのかわりにあの日のステージで響いた音が誰かの心に、
今も生き続けていると信じたい。
そう思わずにはいられません。
そうでなければあまりに哀しすぎる。

第12話:エレキを手放しクラシックギターで夫婦ユニット結成

音が怖くなったつかさくんにとって、かつての相棒だったエレキギターは、
もう手にできない存在に。
それでも、音楽を諦めたくなかったつかさくんは、ガットギター(クラシックギター)を手に取りました。
「音楽が好き」
その気持ちだけが、彼を支えていたのかもしれません。


そして私たちは、静かな音で奏でる2人のユニットを始めたのです。

私は結婚前からつかさくんを完璧主義と思っていました。
それにとにかく思考が多い!!
私の10倍は思考しているので「それじゃあ、疲れるよ」とよく言ってました。
脳が緩む時間があまりなかったのでは、と思います。
ライブ前になるとその完璧主義がいきすぎているように感じました。
エピソードはこちらから↓↓↓↓

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今までは複数の楽器があるバンドだったのに
2人のユニットだと楽器はつかさくんひとり
なので、余計に緊張したんだと思います。

カフェでの温かなライブ、
大きな商業施設でのステージ、
駅前での賑やかなコンサート…
案件を調査し、ゲットするのは私の役目です('◇')ゞ
そして私たち夫婦の音楽は、あちこちに響き渡っていきます。
そして次回――
舞台はつかさくんの地元、原点ともいえる場所。
感動のあまり涙するお客様の姿も…。
いったい何が起きたのか?
次回、心震えるその瞬間をお届けします。

【11/2】隣の工事が終わっても、彼は戻ってこない

隣家の工事の騒音が原因で、聴覚過敏と不眠症を抱えるつかさくんは、
しばらく実家に避難しています。

guitar-prince.com工事がようやく終わり、自宅に戻ってくる予定だったのですが、
LINEが来ないままなので、「今日は来ないのかな?」と連絡をしました。
つかさくん
「連絡遅れてごめんね
今日も午前中ほとんど眠れてなくて、このところのあまりの睡眠の酷さに、
ちょっと怖くなって焦ってる
あみちゃんに会いたい気持ちは強いんだけど、
睡眠が酷くて動けなくなっちゃってる」
とLINEがきて、結局戻ってこれませんでした。

電話で話すと、
「いままで夜だけは音楽を聴いたり
犬の動画を見たりできたけど、それすら楽しめず、
ただ横になっているしかない。不安も襲ってきて苦しい。
こんなの初めてで怖い」と、彼は言いました。

つかさくんの苦しみは本物だと思う。
でも、何年もネガティブな言葉ばかり聞いていると、
私の気持ちも沈んでしまう。
病気だから仕方ない、かわいそう、一番つらいのは彼だと思う。
でも、優しさって心に余裕がないとなかなか簡単じゃない。

処方されている薬
リボトリール
デエビゴ
ピレチア
ヒルナミン
プラミペキソール
ドンペリドン

【10/31】 つかさくんの不眠と私の不機嫌~雨の中の代理受診~

つかさくんの不眠症状はどんどん悪くなっています。
「意識もうろうとする。こんなの初めて。俺大丈夫かな。
初めての症状というのは恐怖だよ。」

今日は2週間に一度の精神科受診の日です。
つかさくんはいま実家に帰ってきているので
病院は電車で1時間半かかります。
私は会社の半休を取って、つかさくんと一緒に病院に行く予定でした。
彼はお昼に起きてきて、
ボサボサの髪の毛、伸びた無精ひげで
「不眠がひどくて吐き気が止まらない。
今日は病院へ行けない。代理受診をお願いしたい」
と懇願。
ギタープリンスと呼ばれた面影は全くありません。
彼は悪くない、病気が悪いのだ、と
自分に言い聞かせ、あたたかい言葉をかけるように
努力はしているのだけど、
彼の実家に来るために急遽リモートワークの許可を取り、
病院に付き添うために半休を申し出て、
自分のほかの予定も変更せざるを得なくなり、
イライラもつのって、
「なんで不機嫌なの?」というつかさくんに対して
突発的にきつい言葉が出てしまいました。
落ちこむ彼を実家において、
お義母さんも「ごめんね」を繰り返していました。

つかさくんの放つ負の波動が、私を包み込んでくる。
その重さに、どうしても耐えられない瞬間があります。
彼が一番つらいということは、頭ではちゃんと理解しているつもりです。
でも、感情は理屈では整理できないこともある。
心が追いつかないまま、私は雨の中を歩いて病院へ向かいました。
無感情な医師の言葉。
気持ちはどんどん暗く沈んでいきました。

今日処方された薬
リボトリール
デエビゴ
ピレチア
ヒルナミン
プラミペキソール
ドンペリドン

第11話:聴覚過敏から始まった地獄

2018年のある日、つかさくんの世界は突然変わりました。
風邪をひいたあと、咳が長引いていたのがきっかけだったのか、
それとも別の原因があったのかは、今でも分かりません。
——仕事中、突然、世界の音が“爆音”に変わってしまった

それは「聴覚過敏」という症状でした。
日常の何気ない音が、つかさくんには耐えがたいほど大きく響く。
レストランのざわめきも、電車のアナウンスも、救急車のサイレンなんてもう最悪。
彼は耳栓を手放せなくなり、外出もままならなくなっていきました。

複数の耳鼻科を受診しても原因は分からず、精神科を勧められました。
精神科で処方された「リボトリール」という薬。
それを飲むと、ほんの少しだけ耳の症状が和らいだそうです。
抗うつ薬も効くかもしれない」と言われ、
何種類か試してみたけれど、どれも効果はなく、結局やめました。
リボトリールだけが、彼の“音の地獄”を少しだけ遠ざけてくれた——
でも、その選択が、のちに取り返しのつかない後悔へとつながることを、
このときの私たちはまだ知りませんでした。

【10/29】苦しみの中で届いたLINEのSOS

今、自宅の隣が工事中のため、つかさくんは実家にいます。

詳細はこちらから↓

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仕事中、つかさくんからLINEが来ました。
「今日はさらに睡眠が取れなかった
もうどうしていいか分からない
苦しくて苦しくて生きていることから逃げたい」

あみ「意味ないかもしれないけど、
明日、明後日リモートワークにするから今夜そちらに行くよ」
つかさ「大丈夫だよ 来なくて」
あみ「意味ないかもしれないけど、病院予約している日に一緒に行けるかもしれないし」
つかさ「あみちゃんが来るのを説明するために
僕の睡眠がおかしくなってることを
母さんに話したんだけど、ヒステリー起こした。
早く出て行ってくれと言われた」

とやり取りして、つかさくんの実家に来ました。
目が痛くてあかないと言ってるけど、
つかさくんの好きなバンドのライブ音源を
ふたりで聴いています。
つかさくん
「このドラムの音はHさんの音じゃないな、クレジット見たらやっぱり違う!
Sさんだ」
「ギターのビブラートがうまくないんだよね~」
「この音はワウを半止めしてるからこんな音がするんだ」
と、色々話してくれます。

“来なくていい”と言われても、やっぱり来てよかった。
つかさくんの隣で、顔を見て話せてよかった。
この音楽がつかさくんの明日を少しでも軽くしてくれますように