不妊治療に数百万円を費やし、何度も涙を流した。
「次こそは」と信じていた日々。
諦めるという決断は、思っていた以上に重かった。
ギャンブルの引き際が難しいのと似ているかもしれません。
子どもを持つことを諦める。
その決断は、夢を手放すことだけではありませんでした。
両親に孫を見せられないという罪悪感、
がんを患う父に、喜びの報告ができないという悔しさ。
知り合いたちが孫の話をするたび、両親はどんな気持ちで聞いているのだろう。
私は、親不孝な娘だ。

それでも、夫は何も責めませんでした。
「ふたりで生きていこう」と。
子どもはいなくても、私たちは穏やかに、仲良く暮らしていました。
そう、あの日までは——。